ルージングトリックカウント (Losing Trick Count)
参照: ルージングトリックカウントによるゲームとスラムの判断
長いスーツのある片寄ったハンドや、パートナと 5-3 以上のスーツフィットがある切札コントラクトの場合は、
ルージングトリックカウント (以降 LTC と呼ぶ) と呼ばれる評価法を使うと、
パートナと合わせて何トリック取ることができるか、絵札点数(HCP)を使うより正確に推定できます。
LTCは次のステップからなります。
- 自分のハンドのルーザ数を数え、勝てるトリック(プレイングトリック)数を求める。
- 自分が勝てるトリック数とパートナに期待できるトリック数を合算する。
または
- パートナのルーザ数を推定し、後述するLTCの計算式から取れるトリック数を求める。
LTCによる評価が適合するハンドは、つぎのような切札コントラクトです。
- ストロング2オープンするかどうかの片寄ったハンド
(上記ステップ1のみ)
- パートナのサポートがなくても切札にしたい長いスーツがある片寄ったハンド
(上記ステップ1と2、または1と3)
- 4-4、5-3 フィットなどの8枚フィット以上のスーツコントラクト
(上記ステップ1と2、または1と3)
ステップ1: ルーザ数を数える
ルーザ数は各スーツ毎に次の要領で計算します.
- 各スーツ多くても 3 ルーザ
- AKQ すべてあれば 0 ルーザ
- ボイドスーツは 0 ルーザ
- 3枚以上のとき、AKQ のうち欠けている枚数がルーザ数
KQ2 ・・・ 1 ルーザ (Aがない)
AQ32 ・・・ 1 ルーザ (Kがない)
AK532 ・・・ 1 ルーザ (Qがない)
K743 ・・・ 2 ルーザ (AQ がない)
QJ32 ・・・ 2 ルーザ (AK がない)
J8643 ・・・ 3 ルーザ (AKQ がない)
- パートナにエントリが期待できるとき、AJ10 は AQx 相当
AJ10 ・・・ 1 ルーザ (フィネス2回でKQどちらか捕らえられる)
- 3枚以上のとき、オナーと一緒でないQは調整
Q932 ・・・ 3 ルーザ (パートナに絵札が期待できないとき)
2 ルーザ
(ビディングからパートナに絵札が期待できるとき)
- ダブルトンのとき、AK のうち欠けている枚数がルーザ数
K2 ・・・ 1 ルーザ (Aがない)
Q2 ・・・ 2 ルーザ (AK がない)
QJ ・・・ 1 ルーザ (当初は1ルーザみなし、ビディングの展開により再評価する)
- シングルトンのとき、A以外は 1 ルーザ
K ・・・ 1 ルーザ
Q ・・・ 1 ルーザ
- 7ルーザ以下のハンドで、KQが多くAJ10が一枚もないハンドは調整 (1ルーザ加える)
LTCの問題点(短所)も理解しておきましょう。
次のハンドで顕著に現れます。
- 弱いハンド ・・・
数少ない絵札が切札かサイドスーツか、またAかQかにより
、ハンドの強さが大きく異なりますが、LTCではその差異を判別できません。
x x x x
Q x x
A x x
x x x
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Qが切札スーツにあれば確実なウィナで、Aと合わせて2トリック勝てますから9ルーザ相当です。
このハンドのLTCは10ルーザですから過小評価です。
弱いハンドのときは、ウィナを数えるのが良いです。
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- 孤立したQ ・・・
3枚以上のとき、AKQ のうち欠けている枚数をルーザ数に数えますが、
これは Axx、Kxx、Qxx のAKQが同価値であることになります。
実際にはそうではありませんから、LTCが過大評価するハンドがあり、調整が必要です。
A x x x x
A x x
A x x
K x
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7ルーザの良いハンドですから、パートナが7ルーザなら、合わせて14ルーザでゲームが狙えます。
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Q x x x x
Q x x
Q x x
K x
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単なるLTC計算では7ルーザですが、パートナが7ルーザでも、このハンドでゲームはありません。
パートナに絵札を期待できないスーツのQをルーザに数える調整が必要で、
パートナの強さにより8〜9ルーザが実質的なLTCです。
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- Aが1枚もないハンド ・・・ 前述の理由で、Aがないハンドも調整が必要です。
K x
Q x x x
K Q x x
Q J x
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単なるLTC計算では6ルーザですが、Aが1枚もないので1ルーザ調整して、7ルーザが実質的なLTCです。
フィットがなく、パートナが弱いハンドなら、Qをルーザに数え、8ルーザの評価になります。
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以下に、いろいろなハンドについてのLTC評価とビディングについて説明します。
プリエンプティブオープン/オーバーコールするときのハンドの評価
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点数が少なく片寄ったハンドのとき、プリエンプティブオープン
または
ジャンプオーバーコール を考えますが、ダウン点が敵方のゲーム点を上回らない事が重要です。
次の2点を考慮します。
- 自分のハンドで何トリック勝てるか(何トリック負けるか)評価する。
前述の「ステップ1: ルーザ数を数える」に従い、ルーザの数を数えます。
次のハンドを評価してみると、
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Q J 10 6 5 3 2
-
4
Q J 5 3 2
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・・・ 2ルーザ(AK負ける)
・・・ ルーザなし
・・・ 1ルーザ
・・・ 2ルーザ(AK負ける)
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5ルーザ数えられますから、8トリック勝てるハンドです。
- パートナのハンドに何トリックか期待する。
プリエンプティブオープン/オーバーコールの場合は、パートナに何トリックか期待します。
プリエンプティブオープンの場合 ・・・
「ルールオブ2、3、4」と呼ばれるガイドに従います。
すなわち、Vul vs Non なら2、同じバルなら3、Non vs Vul なら4トリック期待します。
ジャンプオーバーコールの場合 ・・・
敵方が既にオープンしているので、ルールオブ2、3、4に調整が必要です。
オープナの絵札点を13点と想定し、あなたの絵札点が7点の場合、残り20点です。
その半分10点ををパートナに期待、すなわち3トリック期待できます。
従って、Vul vs Non なら2、それ以外は3トリック期待します。
自分だけで8勝できるからと2ビッドしては、
プリエンプションになりませんし、ゲームを逃すこともあります。
上記ハンドのとき、同じバルならパートナに3トリック期待すると、
2ルーザすなわち11勝期待できるので、5までプリエンプションできます。
しかし、パートナのハンドによっては4メイクできるかもしれませんし、
バルのときは4が安全かもしれません。
ジャンプオーバーコールの例:
片寄った強いハンドでスーツフィットがあるコントラクトの評価
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片寄った強いハンドで、スーツフィットが見つかったコントラクトは、次のステップで評価します。
- 自分のハンドで何トリック勝てるか(プレイングトリック)を評価する。
前述の「ステップ1: 負けるトリック数を数える」に従い、ルーザの数を数えます。
次のハンドを評価してみると、
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A K 7 6 2
K 9 7 4
K Q 9 2
-
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・・・ 1ルーザ(Q負ける)
・・・ 2ルーザ(AQ負ける)
・・・ 1ルーザ(A負ける)
・・・ ルーザなし
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4ルーザ数えられますから、9トリック勝てるハンドです。
- パートナのレスポンスやビディングから、パートナが勝てそうなトリック数を想定します。
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West
2 |
North
2 |
East
3 |
South 1 ? |
ディーラのあなた(South)が1オープン、
LHO(West)の2オーバーコールが入り、
パートナ(North)がレイズ、RHO(East)が3で競い、あなたに回ってきました。
ここで、あなたが何をビッドすべきか、LTC評価で考えます。
パートナがシングルレイズですから、1〜2トリック期待できます。
あなたのハンドのプレイングトリックは9トリックですから、パートナと合わせて10〜11トリック勝てそうです。
LTC評価では10〜11トリック勝てそうなので、4をビッドするのが良いことがわかります。
例1: ゲームビッドするかどうか迷ったとき
注: ポイントによる評価は、このような片寄ったハンドには適しません。
ポイントで評価すると、South のハンドは16点で、North の5〜9点(シングルレイズ)と合わせて21〜25点です。
ポイント的にはゲームトライをしたくなりますが、このビディングの展開では、ゲームトライに使える未ビッドスーツがありません。
また、敵方はスーツフィットしてないので、ダブルはマキシマルダブルではなくペナルティになるので、ゲームトライできません。
仮にここでゲームトライができたとしても、パートナが3で止めるかも知れませんから、
自分でゲームビッドしないとゲームを逃すことになります。
North のAをJに変えてみましょう。
ポイントは合わせて20点(絵札だけなら18点)ですが、それでも4はメイクします。
片寄ったハンドでは20点くらいでもゲームがある典型例です。
8枚以上のスーツフィットがある切札コントラクトの評価
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切札のフィットが 4-4、5-3、5-4、6-3 などで、ラフによるトリック増が期待できる場合の評価方法です。
前述の例とは異なり、勝てるトリックを数えるのではなく、
自分とパートナのルーザ数を LTCの公式に当てはめ、どこまでビッドできるか評価します。
パートナのハンドのルーザ数を推定する
LTC評価によるオープナのハンドの強さとルーザ数:
・ ミニマムオープン ・・・ 7 ルーザ
・ ミディアムハンド ・・・ 6 ルーザ
・ マキシマムハンド ・・・ 5 ルーザ
・ 2オープン相当 ・・・ 4 ルーザ以下
レイズ側のルーザ数:
・ リミットレイズ ・・・ 8 ルーザ
・ ゲームフォース ・・・ 7 ルーザ以下
レスポンダ (またはオーバーコールのアドバンサ) が 4-8 HCPの弱いハンド、または、
トリック数が容易に数えられるハンドは、ルーザ数は使わず、勝てるトリック数で評価する。
・ シングルレイズ ・・・ 1〜2 トリック
・ リミットレイズ ・・・ 3 トリック
例: アドバンサが切札 5-4 フィットで3トリック数えられるときリミットレイズ
LTCの公式で取れるトリック数を計算する
自分とパートナのハンドの推定ルーザ数を元に、次の公式で取れるトリック数を計算します。
この計算結果は、自分とパートナのハンドがどれだけトリックを取れそうかの評価であって、
プレイの巧拙、切札の分かれの良し悪し、フィネスの成否により、トリック数は増減します。
一般的なLTCの公式に 6枚切札の調整
(+1)を加えた式を使用します。
例えば、次の2つのハンドはともに7ルーザですが、ハンドの良し悪しに明らかな差があります。
左の6枚切札のハンドは、右の5枚切札のハンドより、1トリック多く勝てます。
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AK7643
A5
84
J87
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AK764
A5
84
J873
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取れるトリック数=24-(自分のルーザ数+パートナのルーザ数)+(調整)
注: 切札6枚のときは、1トリック多く取れる確率が高いので +1 調整する。
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例1: レスポンダ側で7LTCならスラムトライ
例2: レスポンダ側で7LTCならゲームビッド
例3: オープナが6LTCのとき、リミットレイズされたらゲームビッド
切札のフィットが未知な場合でも、ルーザ数によるハンドの評価の方が適している場合があります。
次例の South は、絵札点は12点しかなく、点数評価ではジャンプリピートに不足するハンドでも、LTCが5ルーザならジャンプリピートします。
その方がより正しい評価であり、パートナに分かりやすい優しいビッドです。
次の例のように、絵札点は16点しかなく、点数評価ではジャンプシフトに不足するハンドでも、
LTCが4ルーザならジャンプシフトします。
その方がより正しい評価であり、パートナに分かりやすい優しいビッドです。
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